福岡県の訪問看護ステーションは増加していますが、同時に休止・廃止も生じています。厚生労働省の2025年公表資料では、2025年4月1日時点の福岡県内の指定訪問看護ステーションは1,067事業所、うち稼働中は1,051事業所です。2024年度中には159事業所が新規開設する一方、50事業所が廃止、15事業所が休止しており、休廃止率は6.1%でした。
そのため、福岡の訪問看護M&A・事業承継では、単に「売れるか」「いくらになるか」だけでなく、職員と利用者への影響、指定・契約の引継ぎ、地域の医療機関・ケアマネジャーとの関係、資金繰りなどを一体で確認する必要があります。経営改善や業務提携で継続できる場合もあるため、最初からM&Aだけに絞らず、複数の選択肢を比較することが大切です。
福岡県の訪問看護ステーションの現状
| 項目 | 福岡県の状況 | 基準時点 |
|---|---|---|
| 指定事業所数 | 1,067事業所 | 2025年4月1日 |
| 稼働事業所数 | 1,051事業所 | 2025年4月1日 |
| 新規開設 | 159事業所 | 2024年度中 |
| 廃止 | 50事業所 | 2024年度中 |
| 休止 | 15事業所 | 2024年度中 |
| 休廃止率 | 6.1% | 2024年度 |
全国でも2024年度の休廃止率は6.4%で、2022年度の4.9%を底に再び上昇しています。需要の拡大だけを見れば成長市場ですが、新規参入が多い地域では利用者や人材の確保を巡る競争も起こります。
なお、福岡県内の訪問看護M&A件数を網羅した公的統計は確認できません。新規・廃止・休止の件数を、そのままM&A案件数とみなすことはできません。本ページでは、公開された事業所動向と、訪問看護事業の承継で実際に確認すべき項目を分けて整理します。
訪問看護で事業承継・M&Aを考える主な背景
厚生労働省の資料では、全国の訪問看護事業所が廃止・休止に至る主な理由として、従業員確保の難しさ、管理者の退職、利用者が少なく経営維持が難しいこと、人員基準を満たせなくなったことなどが挙げられています。
- 看護職員を採用・定着できない
- 管理者の負担が大きく、後任が見つからない
- 利用者数や訪問件数が伸びず、固定費を吸収できない
- 請求・労務・営業・オンコールが経営者や管理者に集中している
- 後継者がいないが、職員と利用者の受け皿は残したい
こうした問題は、株式譲渡や事業譲渡だけで解決するとは限りません。採用方法の見直し、請求・バックオフィスの改善、地域連携、他事業所との業務提携などで立て直せる可能性もあります。
福岡の訪問看護M&Aで確認される評価ポイント
1.人員配置と引継ぎ可能性
看護師・准看護師・リハビリ職等の人数、常勤換算、管理者の継続意向、退職予定、採用状況を確認します。訪問看護では職員が事業価値を支えるため、単に人数だけでなく、承継後も安心して勤務できる説明と処遇設計が重要です。
2.利用者構成と収益の安定性
直近のレセプトや請求実績から、利用者数、訪問件数、医療保険・介護保険の構成、疾患・医療依存度、特定の紹介先への依存度を確認します。売上だけでなく、利用者や紹介先が過度に偏っていないかも重要です。
3.地域連携と営業基盤
病院、診療所、居宅介護支援事業所、地域包括支援センターなどとの関係は、承継後の継続性に影響します。紹介が特定個人の人脈だけに依存している場合は、引継ぎ方法を具体化します。
4.指定・請求・運営体制
指定、変更届、加算届、運営規程、重要事項説明書、契約書、レセプト、返戻・査定の状況を確認します。事業譲渡では、法人そのものを引き継ぐ株式譲渡とは異なり、指定や契約をそのまま承継できないことがあるため、行政や専門家への事前確認が必要です。
5.財務・借入・未払金
決算書だけではなく、月次試算表、資金繰り、借入金、リース、未払給与、未払社会保険料、未払税金、役員借入金などを確認します。小規模事業所では、帳簿に十分反映されていない債務や個人契約が残っていることもあるため、早めの整理が必要です。
「売却」だけではない4つの選択肢
| 選択肢 | 向いている状況 | 主な確認事項 |
|---|---|---|
| 経営改善 | 本業の需要はあるが、採用・営業・請求・資金繰りに課題がある | 月次収支、訪問件数、人員配置、業務負担 |
| 業務提携・地域連携 | 単独運営の負担を減らしながら法人を維持したい | 役割分担、費用、個人情報、契約範囲 |
| 親族・役職員への承継 | 社内に後継候補がいる | 株式・保証・資金調達・経営権の移行 |
| 第三者承継・M&A | 後継者がいない、または他法人との統合が継続に有効 | 譲渡方式、職員・利用者への説明、指定・契約の引継ぎ |
赤字や借入があるからといって、直ちに廃止しかないとは限りません。一方で、相談が遅れるほど資金や人員の選択肢は狭くなります。給与・社会保険料・税金の支払いが難しくなる前、管理者や主要職員の退職が確定する前に状況を整理することが重要です。
売却・事業承継の前に準備したい資料
- 直近3期分の決算書・申告書
- 直近の試算表と資金繰り表
- 直近3か月程度のレセプト・請求実績
- 利用者数・訪問件数・紹介先の一覧
- 職員一覧、雇用契約、給与・社会保険の状況
- 指定通知書、加算届、運営規程、契約書
- 借入、リース、保証、未払金の一覧
- オンコール、請求、営業など日常業務の引継ぎ資料
すべてがそろっていなくても相談は可能です。まず「不足している資料」と「急いで確認すべき問題」を分けることで、経営改善を優先するのか、承継先を探すのかを判断しやすくなります。
相談先を選ぶときのポイント
- M&Aだけでなく、経営改善や業務提携も比較できるか
- 訪問看護の指定・人員基準・請求実務を理解しているか
- 手数料、支援範囲、相手方との契約関係を事前に説明するか
- 職員・利用者・取引先への情報開示を慎重に進めるか
- 法務・税務・労務の論点を外部専門家と連携できるか
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」では、手数料や業務内容、利益相反、秘密保持などについて、支援機関から十分な説明を受けることが重要とされています。契約前に、何をどこまで依頼するのかを確認してください。
よくある質問
赤字でも訪問看護ステーションを譲渡できますか?
赤字だけで譲渡可能性がなくなるわけではありません。人員、利用者、紹介先、指定、改善余地、借入・未払金などを総合的に確認します。ただし、資金繰りが逼迫している場合は、M&Aより先に支払計画や事業継続の安全性を確認する必要があります。
小規模なステーションでも相談できますか?
可能です。規模が小さい場合は、株式譲渡だけでなく、事業譲渡、業務提携、運営支援、他事業所との統合なども含めて検討します。
職員や利用者にはいつ説明しますか?
交渉初期から一律に知らせるのではなく、秘密保持、雇用継続、利用者へのサービス継続、指定・契約の手続きなどを整理したうえで、適切な時期と方法を決めます。拙速な情報開示は混乱につながるため注意が必要です。
廃止を決める前でも相談できますか?
むしろ、廃止を決定する前の相談が重要です。経営改善、連携、承継、M&Aの可能性を比較し、職員と利用者への影響が小さい方法を検討できます。
メディカル・ケアライフの支援体制
主担当責任者は、都市銀行で11年の勤務経験を持ち、代表取締役・CFOとして企業経営に携わってきました。企業再生、M&A、買収後の統合(PMI)等の実務経験を踏まえ、訪問看護事業者の現状整理から実行まで支援します。
法務・税務・労務上の専門判断は、弁護士・税理士・社会保険労務士等の外部専門家と連携して対応します。
福岡で訪問看護の今後を整理したい方へ
メディカル・ケアライフでは、最初から売却を前提にせず、現状診断、経営改善、業務提携・地域連携、事業承継、必要な場合のM&Aという順序で選択肢を整理します。
「まだ売却すると決めていない」「赤字や人材不足をどこから直せばよいか分からない」という段階でもご相談いただけます。詳しい支援内容はサービス内容、進め方はご相談の流れをご覧ください。
参考資料
※本ページは2026年9月25日時点の公開資料に基づく一般的な情報です。個別の譲渡可能性、企業価値、法務・税務・許認可上の判断を保証するものではありません。具体的な手続きは、行政機関および弁護士・税理士・社会保険労務士等の専門家へご確認ください。